迷い階層、深層──そこは“選べぬ者たち”の終着点
塔の空気が変わった。
ぬるく、湿った風が吹いている。
👨シュンタ「……なんか、生ぬるいな。これが“選べなかった人たち”の空気ってやつか?」
🤖ピー助「ここは“迷い階層”の最深部、別名“境界床(きょうかいしょう)”でぴ」
👩カオリ「名前だけで足元ふわつくじゃないのよ……」
塔の床はガラスのように透き通っており、下には投稿者たちの“未投稿リスト”が文字列となって渦巻いていた。
光る二つの足場──選択肢は、今か過去か
塔の中心、台座がせり上がる。
そこにはふたつの足場が、ぬぅっと現れる。
ひとつには【保存済み下書き:32件】と表示された光。
もうひとつは【投稿予定:本日分】の光。
👨シュンタ「……過去か、今か、ってことか」
🤖ピー助「これは“選択儀”でぴ。投稿の塔が登る者に最後通告を出してるでぴ」
👩カオリ「“まだどっちも捨てられてないあなた”ってことね。あーめんどくさ」
👨シュンタ「うっ……それ言われるとグサッとくる」
👩カオリ「で、どっち選ぶの?」
未投稿リストの亡霊たち
そのとき──
床下の渦が、不意に“声”を発した。
「保存版にしておいたんだ……」
「いつかリライトしようと思ってたのに……」
「タイトルは完璧だったのに……」
👨シュンタ「……まさか、これ全部、誰かの下書きか?」
🤖ピー助「選ばれなかった投稿たちの、うらめしき念でぴ……“タイトルだけ選手権”の末路でぴ」
👩カオリ「“下書きに入れておけば、書いた気になれる”ってやつね。あるあるすぎてツライ」
👨シュンタ「俺も、心当たりあるよ。『2023年まとめ記事』を2024年夏に見つけたとき、泣いたもん……」
決断、それぞれの選択
塔が唸る。
「投稿する者よ。過去を選ぶか、今を進むか、選べ。」
👨シュンタ「……俺は、今を選ぶ」
👩カオリ「潔いじゃない」
👨シュンタ「過去のネタを否定するんじゃなくて、“今の自分”が書けるものを信じたい。…それが塔を登るってことだろ?」
🤖ピー助「決めたなら、進むだけでぴ!」
カツン――
シュンタの足が、“今”の足場を踏む。
塔が――震えた。
境界、崩壊。そして、塔は再び上へ
ゴゴゴゴゴ……
下から上へと突風が吹き上がる。
床に渦巻いていた“未投稿リスト”が、風に舞って消えていく。
👩カオリ「なによこれ……なんか泣きそうになってきたじゃない」
👨シュンタ「まるで……“迷ってた投稿者”たちが、やっと浮かばれたみたいだな」
🤖ピー助「迷いの霧は晴れたでぴ。これで次の階層への扉が開くでぴ!」
塔の天井が、パキンと音を立てて割れた。
その向こうには、青く澄んだ空と、一本のはしごが――まっすぐ、登っていた。
そして、次なるステージへ
👩カオリ「次の階層……行くのね?」
👨シュンタ「ああ。今回は“書かない罪”を乗り越えた。でもきっとまた、“書けない恐怖”が来るんだろうな」
🤖ピー助「でぴっ。塔はどこまでも、投稿者を試す場所でぴ」
👩カオリ「なら、せいぜい一緒に登ってあげるわ。突っ込み係がいないと、この塔ツラいからね」
👨シュンタ「頼りにしてます、姐さん」
そして三人は、揺れの止んだ階層を後にする。
次なる試練は、すでに始まっていた。
【次回予告】
塔の第十三層、そこは“閲覧数ゼロ”が支配する沈黙の世界――
投稿しても、誰にも届かない。そんな世界で、シュンタは何を見るのか?
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